あの夜のこと【美奈 視点】

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「こっちが被害者らっつーの!それらのに謝れって、ひどくら〜い?」 もう呂律が怪しい。 しかも声のボリュームも大きい。 そう思って少し周りを気にしていたら、斜め前の男性と目が合った。 さすがに(うるさ)かったかな、と思っていたら、 「大変そうですね」 と話しかけられた。 きっと、目が合ってそのまま反らすのも気が引けたのだろう。 笑ってやり過ごそうとしたら、 「わかりますぅ?!」 と、志桜里が彼に詰め寄るように答えていた。 あぁ〜あ、酔っぱらいがとうとう他人に絡んじゃったよ。 男性が酷く驚いた顔をしているではないか。 「すみませんっ。志桜里!ちょっと飲み過ぎよ」 男性に謝り、志桜里を(たしな)めたのだが、 「構いませんよ」 と、男性がやんわり笑う。 すると今度は隣から、 「オレたちで良かったら話聞きますよ?全く知らない人に吐き出した方がスッキリする時もあるでしょ? 一緒に飲みましょうよ」 なんて言ってくるではないか。 一瞬、ナンパか? と警戒したが、こんな居酒屋でナンパはないか、と思い直した。 それになにより、さっきから志桜里が隣の男性に絡んでいて、このまま知らん顔で隣で飲み続けるのも難しいか…と判断し、一緒に飲むことを承諾する。
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