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大通りに出て、タクシーをつかまえる。
「志桜里、タクシーきたよ。さぁ、乗って」
「いやぁらー。あらし、しんろーとかえるぅ〜」
と言って、進藤さんを離さない。
あ~、もう。進藤さんをお世話係か何かだと思ってない?
呼び捨てにしてるし。
ちょっと困ったような顔をした進藤さんが、
「あ~、じゃあ、オレも一緒に送るよ」
と言ってくれる。
どこまでも面倒見がいい。
志桜里をタクシーに押し込み、掴まれているので、自らも乗り込む進藤さん。
「さ、美奈さんも乗って」
と声がかかる。
だが、
「えぇ〜、みなはいいよぉ〜。あしら、はやいんれしょ〜? はやくかえんなぁ~。らぁ~ねぇ〜、ばいば〜い。あはははは」
……コノヤロウ。
酔っているとはいえ、ムカついてきた。
冷めた目で志桜里を見ていたら、タクシーの運転手さんから催促され、キレた私は進藤さんに志桜里の荷物を渡す。
「え!それは困るよ!美奈さんも一緒に来てよ!その方が安心でしょ?」
「いいえ。こんなコもう知りません。煮るなり焼くなりどうとでも。こんな酔っぱらいでよければ好きにしてください。じゃ、運転手さん、行ってくださーい」
そう言ってドアを閉める。
去っていくタクシーの中から、進藤さんの困惑した顔が見えた。
さて、どうなるかなぁ〜。
「良かったの?あいつに任せて」
横から木原さんに声をかけられる。
「はい。あ、進藤さんには申し訳ないことしました」
「いや、大丈夫でしょ。あいつは、酷いことはしないと思うけど。でも、ここんとこ彼女いないみたいだし、あんなにくっつかれたら我慢できなくて襲っちゃうかもしれないよ?」
確かに、あんなに抱き着かれたら、誘ってると思われても仕方ないかも。
……ま、いっか。大人だし。
「まあ、自業自得ですよね」
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