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やっぱり今でも篤志の顔色をうかがってしまう。
もう別れたのに……
「あ、いや、初めてでこだわりがないなら、見本のスーツを試着してから調整したほうが、リーズナブルだし、初めての人にも…」
「ああ?!バカにしてんのか!」
え、怖い。何?なんで?
どこに怒りのスイッチがあった?
大きな声を出されたことで、恐怖で震えそうになる手をギュッと握って、なんとか耐える。
あ!もしかして、リーズナブルってゆーのが、気に障ったの?
こんなところでもプライドの高さが邪魔をするなんて…
「その辺の安い既製品適当に買わせて追い払おうとしてんだろ!」
そんなこと言ってない!
怯えていると悟られないように謝罪する。
「そんなことは……ごめんなさい!こだわりがないって言ったから…」
「ホントは俺のスーツ選ぶ気ないんだろ?!それともなにか。俺には安物のスーツがお似合いです、ってか!」
「ち、違うよ!」
「さっさと俺に帰って欲しいのか?!そんなに会話したくないのかよ!!っざけんな!!!」
篤志の声が大きいから、周りの客が何事かと気づき始めた。
やばい!
こんな店先で荒げた声を出されては、話がややこしくなってしまう。
どうにか篤志をなだめなければ。
でも、大声で怒鳴られたことで、一気にむかしを思い出してしまい、委縮して声まで震える。
ダメだ!
しっかりしろ!
せめて、篤志をもう少し店の奥に連れて行ければ……
そんなことを考えていた時、別の声がかかった。
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