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これ以上付き合っても、彼を好きになることはないだろうと思い、別れを切り出した。
しかし、これが彼のプライドを傷つけたらしく、その時すぐに別れることはできなかった。
私が会うのを渋るようになったからか、篤志がイライラしはじめ、いつしか暴言を吐かれるようになっていた。
直接暴力を加えられることはなかったが、大きな声で喚き散らし、回りにある物を蹴ったり殴ったりしていたので、恐怖が植え付けられた。
その暴力行為が、いつか自分にも向けられるんじゃないのかと思ったら怖くて、できるだけ怒らせないようにしようと、彼の顔色ばかりうかがっていた。
篤志の性格が変わったのは、自分のせいかもしれない。
そんな風に思ったりもした。
そんな楽しいとは思えない付き合いも、長くは続かなかった。
篤志と別れたのは、浮気現場を目撃したからだ。
悲しかったわけではない。
自分が拒んでいるのだから、当然よねと納得した。
そもそも、そういう相手がいるなら、なぜ私とズルズル付き合っていたのかがわからない。
篤志は最後に、
「お前がヤらせないからだ!もったいぶりやがって。お前なんかこっちから願い下げだ!」
と罵った。
それから連絡は途絶え、私はやっと解放された、と安堵した。
それでもしばらくは男性に苦手意識があったし、大きな声にも委縮するようになった。
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