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「採寸して体に合わせて一から作るのがオーダーメイドだと思ってた」
「それはフルオーダーで、時間もかかるし、金額も20万とかはするけど…」
待って。
ここから先、篤志の機嫌を損ねないように案内するにはどうしたらいいの?
お金がないと思われたくない篤志が、本当にフルオーダーのスーツが欲しいのかと言われれば、きっと違うと思う。
だって、転職していなければ、篤志が仕事でスーツを着ることなんてないもの。
だからといって、大丈夫?と聞いてしまえば、きっとまた貧乏人だと思われたくなくて、見栄を張って着る頻度の少ない高価なスーツを買わせてしまうことになる。
「えっと…あ、篤志さんは、なぜスーツを作ろうと思ったの?」
目的がわかれば、提案しやすいかと思ってそう訊ねた。
もしかしたら、転職してスーツを着用するような仕事に就いたのかもしれないし。
「は?!篤志さん?!」
「え?」
名前呼んじゃいけなかったの?
「なんでさん付け?普通に篤志でいいんだけど」
「いや、だって、もう、付き合ってるわけじゃないからメリハリを」
「はぁ?!」
え?何?なんで?
どこに不機嫌になるポイントがあったの?
「オレ、別れたつもりねーけど」
「え?……は?!」
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