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「横田!大丈夫か?」
坂上さんが息を切らせて駆けつけてきた。
「坂上さん、なんで……」
「この間様子がおかしかったから、スタッフに言ってあったんだ。彼が来たら、オレにも連絡してくれって。それでも外からだと来るの遅くなっちゃうけど、今日はたまたま戻って来る時だったから、ちょうど良かった」
笑って言う坂上さんの顔を見て、泣きそうになった。
坂上さんが篤志に向き直り問いかける。
「えと、失礼。そこの君。横田に何言ったの?」
坂上さんの口調は、お客様に対するそれではなく、怒気を含んでいるように思える。
「お前、この前の……。あんたには関係ない」
「関係なくはない。同じ店のスタッフだし、客であるあなたへの対応の仕方に問題があったのなら、同僚として詫びなきゃならない」
「今は客とか店員とか関係ねーんだよ。オレとこいつの話なの!男女の仲の」
さっきから篤志が大きな声で話すものだから、もうだいぶ目立ってきていて、みんな何事かと遠巻きに見られている。
こんな通路に面したところで……
だから奥に連れて行きたかったのに。
「だからさぁ、ちょっとこいつと二人で話させてくんねえ?」
「プライベートな話でしたら、終業後にお願いしたいんですがね」
「はあ?オレは客だぞ!客の言うことが聞けねーのかよ!」
つい今しがた、自分で客とか店員は関係ないと言ったはずなのに、もう忘れたのだろうか。言ってることがムチャクチャだ。
「キミ、それはちょっと都合良過ぎでしょ。さっき客とか店員とかは関係ないって言ってたじゃない」
「うっせーな!!とにかく、あんたには関係ない話なんだよ!すっこんでろ!!」
篤志がキレている。
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