モヤる心

2/8
前へ
/139ページ
次へ
「どうぞ」 「お邪魔します」 少し片づける時間をもらったあと、坂上さんを部屋に招いた。 「あ、なんか買ってくれば良かったな。腹へるよな」 はっきり言って食欲はないが、坂上さんはそういうわけにもいかないだろう。 「……あの、簡単なもので良かったら、何か作りましょうか?」 「マジで?!それ、すげー助かる!」 「でも、私料理苦手なので、期待しないでくださいね」 ひょんなことから手料理をふるまうことになったが、何かしてた方が気が紛れるから、良かったのかもしれない。 それから家にあるもので、オムライスとサラダとスープを作った。 「確かに、苦手って言ってたもんな」 坂上さんが苦笑いしているのは、オムライスを巻くのに失敗して卵が破けてしまっているからだ。それでも、マシな方を坂上さんに出したのだが。 「すみませんね」 「いや、ありがとう。じゃ、いただきます。 ……お、味は普通だな」 「普通…」 「おう。普通に食えるし、美味しいってことだよ!気にするな」 「……なんか微妙です」 でも、なんだかんだ言いながら、完食してくれた。 「しかし、意外だったな」 「何がですか?」 「横田って、部屋はいつも綺麗にしてて、料理とかも上手にこなすイメージだった」 「……期待に沿えず、すみませんね」 勝手なイメージだけど、なんだか軽くディスられた感じだ。 これは、私の恐怖心を和らげるために、わざと揶揄(からか)っているのだろうか。 料理はともかく、部屋は綺麗にしているつもりだけどな。 片付けする時間をもらったから、散らかしていると思ったのかな。 室内に干してた洗濯物を片付けたかっただけなんだけど。 坂上さんは、普段から冗談を含んだフレンドリーな物言いをするのだが、今日はなぜかうまく流せずにいた。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

630人が本棚に入れています
本棚に追加