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「どうぞ」
「お邪魔します」
少し片づける時間をもらったあと、坂上さんを部屋に招いた。
「あ、なんか買ってくれば良かったな。腹へるよな」
はっきり言って食欲はないが、坂上さんはそういうわけにもいかないだろう。
「……あの、簡単なもので良かったら、何か作りましょうか?」
「マジで?!それ、すげー助かる!」
「でも、私料理苦手なので、期待しないでくださいね」
ひょんなことから手料理をふるまうことになったが、何かしてた方が気が紛れるから、良かったのかもしれない。
それから家にあるもので、オムライスとサラダとスープを作った。
「確かに、苦手って言ってたもんな」
坂上さんが苦笑いしているのは、オムライスを巻くのに失敗して卵が破けてしまっているからだ。それでも、マシな方を坂上さんに出したのだが。
「すみませんね」
「いや、ありがとう。じゃ、いただきます。
……お、味は普通だな」
「普通…」
「おう。普通に食えるし、美味しいってことだよ!気にするな」
「……なんか微妙です」
でも、なんだかんだ言いながら、完食してくれた。
「しかし、意外だったな」
「何がですか?」
「横田って、部屋はいつも綺麗にしてて、料理とかも上手にこなすイメージだった」
「……期待に沿えず、すみませんね」
勝手なイメージだけど、なんだか軽くディスられた感じだ。
これは、私の恐怖心を和らげるために、わざと揶揄っているのだろうか。
料理はともかく、部屋は綺麗にしているつもりだけどな。
片付けする時間をもらったから、散らかしていると思ったのかな。
室内に干してた洗濯物を片付けたかっただけなんだけど。
坂上さんは、普段から冗談を含んだフレンドリーな物言いをするのだが、今日はなぜかうまく流せずにいた。
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