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玄関を出て、様子をみてきた坂上さんが言う。
「まだいたわ。しぶといな、あいつ」
そう言って再びベッドに横たわる。
部屋に入ってからもうずいぶん時間が経っている。
それなのにまだ様子を窺ってるって、何が目的?
「坂上さん、つけてきた人ってどんな感じの人でした?」
「うん?」
「やっぱり、篤志なのかなぁ、と思って…」
「あ、あぁ、アイツだった。この前店に来てたヤツ」
本当に?
暗いのに顔が見えたの?
つけてきたのが篤志だとしたら、何もせずにただ待つだけの行為に、こんなに長時間費やすだろうか。
結構短気な性格なのに…
でも、店でも待たれてたし、篤志の可能性も充分あり得るか。
こんなに執着されるなんて…
私が考え込んでいる傍らで、坂上さんがテレビを見ながら笑っている。
この人はなぜこんなにリラッスクしているのだろう?
私のことを心配してここにいるんだよね?
まあ、だからといって、ずっと真面目な顔されてても落ち着けないし、余計恐怖を煽られるかもしれないから、できるだけ何事もないように振舞った方が、外にいる人が気にならなくていいのかもしれない。
これは、坂上さんなりに私に気を使っている、ということなのかな。
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