モヤる心

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「なぁ横田。ビールとかはないの?」 「……え? あ、ごめんなさい。アルコールは置いてないんです。コーヒーでもいいですか?気がつかなくてすいません」 「え?お酒ダメだっけ?」 「外で飲むことが多くて。家で一人では滅多に飲まないんです」 先輩だから?遠慮がないのは。 心にモヤがかかったまま、他愛ない話をして過ごした。 坂上さんは、いつまでいる気なんだろう。 私を心配して家にいるはずだから、帰ってくれとはなかなか言いづらい。 さっきまでは確かに恐怖もあったけど、坂上さんにずっと家に居られることにも疲れてきてしまった。 「坂上さん、終電とか大丈夫ですか?」 「ん?あぁ、帰れってか?大丈夫か?あいつが押し掛けてくるかもしれないぞ」 だったら、坂上さんはどうするつもりなんだろう。 まさか、泊まったりはしないよね? 「戸締りしっかりしますし、もしドアの前まで来たら警察呼びますので大丈夫です」 「そっか。……なら、今日は帰るとするか」 「坂上さん、今日はありがとうございました」 「うん。またなんかあったら、すぐ連絡して」 そう言って帰っていった。 一人になってほっとする。 しばらくして、玄関から外を見回してみたが、不審な影は見当たらなかった。
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