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イヤだ!
必死に抵抗するが、強い力で抑えつけられる。
坂上さんが怖いと思った。
欲望を自分勝手にぶつけられ、どこか篤志と似た怖さを感じた。
身体が恐怖で震える。
震えて力が入らない。
私の抵抗が弱いのをいいことに、口内に舌を差し込もうとしてくる。
しかし、そこは口を固く結び、必死に侵入を阻む。
気が付けば涙を流していた。
それに気づいた坂上さんが、顔を離して苛立った感じで言う。
「なんで!……家にあげてくれるし、ご飯も作って、普段家で飲まないのにビールも用意してくれてたろ?俺のために!横田もそういうつもりなんだって、普通思うだろ!」
ゆるゆると首を振りながら
「そんなつもりは……ごめんなさい」
と、なんとか答える。
それから、悔しげな顔をした坂上さんは、私から顔を背けて小さな声で「帰るわ」と言って出て行った。
悲しかったし、どこか裏切られたような気分がして落ち込んだ。
いまだ震える手を握りしめて、心を落ち着かせようとする。
キスされて、咄嗟に嫌だ!違う!と思ってしまった。
ふと、とろけるように心地よかった進藤さんとのキスを思い出してしまった。
あの時はなぜ、得体の知らない男に抱かれているのに、嫌だと思わなかったんだろう…
キスの一件から、坂上さんのことが怖くなり、避けるようになった。
坂上さんも、私を送ろうとしなくなった。
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