661人が本棚に入れています
本棚に追加
「久々に会った時も、すぐ怒ってたし、やっぱり変わってないって思って、怖くて仕方なかった。けど、私の態度も良くなかった。ごめんなさい」
私もまた頭を下げ謝罪する。
「いや、志桜里が謝る必要はねーよ」
「なによりも、はじめにハッキリ断れば良かったね。そしたらこんなに拗らせてなかったかも。言えなくてごめんね」
「志桜里は優しいからな。たった四ヶ月でも、オレは志桜里と付き合えて嬉しかったんだよ」
たった四ヶ月……私からしたら四ヶ月も、だ。
「でも話せてスッキリした。ありがとな。
それと、もうここには来ないから安心しろよ」
「うん。……え?スーツは?」
「そんなの口実に決まってんだろ。それに、オレはまだ、ここでスーツオーダーできるレベルじゃねーし」
本当に必要なかったのか。
だったら売り場の人には迷惑かけただけになってしまったな。
「レベルとか別に…みんながみんな、そんな高級なスーツ買ってるわけじゃないよ。リーズナブルのだってあるんだし」
「ははは!普段スーツなんて着ないんだから、そんな何着もいらねーよ!
次に買い替える時までにレベル上げて、そん時にオーダーしに来るわ」
「……わかった。待ってる」
「待ってる、て、いつになるかわかんねーのに、ずっとここで働くつもりかよ」
「え?そのつもりだけど」
接客は好きだし、外商をするつもりもない。
クビにでもならない限り、ここで働くつもりだ。
私の返答に、屈託なく笑う篤志。
自然と私も笑みがこぼれた。
はじめてではないだろうか。篤志とこんなに穏やかに会話したのは。
最初のコメントを投稿しよう!