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だから、今なら聞ける気がして、気になってたことを聞いてみた。
「篤志に一つ聞きたいことがあるんだけど」
「うん。何?」
「私を、その……つけてた?」
「あ~……」
視線を反らしてとても言いづらそうにしている。
てことは、本当に?
「怒らないから正直に言って?」
「えっと~、……一度だけ、な。どうしても話したくて。だって志桜里引越してたから家がわかんないし、でも店に行けばまた迷惑かけるし」
だからと言って、つけてこられても迷惑だけど。
「でも、彼氏が一緒だったろ?ホントはちょっと疑ってたんだよ。
で、マンション前で別れるかな~て、思ってたんだけど、中まで一緒に入ってったから、彼氏っていうのは本当だったか~、て諦めたよ。それでもやっぱり謝りたくて、今店に来ちゃってるんだけどな」
そう言って苦々しく笑う。
諦めたってことは、坂上さんが咄嗟についた嘘だったけど、それで篤志を騙せたってことだから、結果良かったのかな。
でも、それよりも気になることがある。
「つけてたのって一回だけ?」
「そうだけど」
え?一回だけ?
「その日、しばらく外で待ってたりした?」
「いや?だって、彼氏と一緒に部屋入ったなら、しばらく出てくるはずねーじゃん。待つことに何の意味があるんだよ?密室に二人でいる時間とか、そんなん知りたくもねえ。二人で部屋に入ってった時点で帰ったよ」
え?
じゃあ、あの日坂上さんは誰を見たの?
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