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「さて、岩元さん。普通にショッピングに来た客を装うので、私たちの関係の設定をしようか」
「え、そんなところからですか?」
「本社の人間だと気づかれないように、徹底しなきゃ」
「なんだかちょっと、ワクワクします!あ、不謹慎ですね、すみません!」
後輩の岩元さんはまだ二年目で、今回初めてこのような調査に同行する。
彼女の経験も含んでいるのだろう。
私服に着替えて、岩元さんに視察の注意点などを教えながら移動する。
「でも横田さん、普段でも売り場回ってるから別店舗といえど、顔知られてるんじゃないんですか?」
「私?そんなに何度も行ってるわけじゃないし、私の顔まで覚えてないでしょ」
「そうですかね~」
「それに、もし本店の人ってわかったとしても、私みたいなのが視察、なんて思わないんじゃない?二人組だし、普通に買い物に来たんだ~ぐらいで。定期的に役付けの方々が、いかにも!って感じで視察に回ってたりするしね」
「そうなんですね」
まぁ、スーツ着た殿方が鋭い目でキョロキョロ見まわしてたら、すぐに、視察だ!てバレるけどね。
気を引き締めてもらうという意味では、それはそれでいいんだろうけど。
そういう人たちが回ったりしてるから、こんなペーペーの社員がチェックしに来た、だなんて思わないだろう。
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