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視察の時は毎回、なんとなく騙しているようで罪悪感をいだいてしまう。
手ぶらだと不自然になるので、ところどころでちゃんと買い物もする。
これは、あとで本部でレシートを見せれば費用として精算できるのだが、私はできるだけ自分で使用できるものを購入し、商品が無駄にならないようにしている。
妙に生き生きした岩元さんに、やたら「おねえさん!」とか裏設定の婚約者を匂わせる発言をされながら、各売り場をまわり、接客しているスタッフの様子を見たり、時々声をかけてその対応を窺う。
岩元さんの中でかなり妄想が膨らんでおり、結婚後の新居に必要な物を見に来ているだとか、次から次へと嘘の話が出てきて感心するほどだった。
そうして、いくらか小物を買い込み、上の階のレストランで随分遅い昼食をとる。
食べながら、まずは岩元さんの意見を聞いてみる。
「さて、これで言われてた売り場は全部まわったハズだけど、岩元さん的に気になるところがあった?」
「早苗って呼んで下さいよ~。仕事だけど楽しかったですし、仲良くなったと思ってたから、また距離が開いた感じがして寂しいですぅ」
確かに、私も楽しんでしまった感はある。
いちいちテンション高くて、スタッフの懐に入り込むのが上手だな、と思ったし、ホントの妹みたいで、かわいく思えた。
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