記憶のない朝

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昨日はイヤなことがあって、発散したくて同期の美奈を誘って飲みに行ったんだよね。 それで、なんかいつもより飲み過ぎた気がする。 で、それから……… なぜか途中から人数増えてたよね? なんで? ……あ、なんか隣のテーブルの人たちと盛り上がっちゃって、一緒に飲んだんだっけ? 「え?!もしかして、隣の席の人?」 「そこからかよ」 彼がため息をつく。 「一緒に飲んだことは思い出したの?」 「えっと、ぼんやりと……。え?ていうことは、私、お持ち帰りされちゃったってことですか?!酔ってる女相手に手を出すなんてひどくないですか?!」 「はぁ?いやいや。どっちかっていうと、誘ってきたのそっちだと思うけど」 「ウっソだあ!!酔ってても私そんなことしませんよ!」 急激に頭が冷えて、目の前の男が憎たらしく思えてきた。 酔っていたとしても、酒の力を借りて自分から男を誘う、なんてことは今までしたことがないし、そんなことができるような性格でもない。 「よく言うよ。へべれけに酔っちゃって住所も言えなかったくせに。で、仕方なく俺んちに連れてきたんだけど……」 美奈が一緒にいたはずなのに、なぜこの男と一緒に帰る流れになったのか。 「それはそれはご迷惑おかけしました!でも!あなただって、仕方なく、て言うわりには、ちゃっかり手出してるじゃないですか!」 「っ……いや、だって目の前であんな誘惑されたら……俺も男だし……」 しどろもどろに答える男に、あぁ、やっぱり昨日もヤッちゃったのか、と落胆する。 「最っ低。私のせいにして」 「……そう言うけどさ、さっきはシラフだったよね?同意したよね?めちゃくちゃヨがってたし」 「なっ!!」 ムカつく!!! やっぱりさっさと帰ろう!
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