ミステリーショッパー

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「かなり暑くなりましたね~。熱中症で運ばれる人も増えてるみたいですよ」 本部に戻りながら、早苗ちゃんが言う。 そこでふと、去年のことを思い出す。 「そうそう。去年ね、店の中で気分悪くなっちゃった人がいて、あとでわかったんだけど熱中症だったのよ」 「え?店内でですよね?クーラー効いてるのに?」 「そう思うよね?年配の方だったんだけど、外から歩いて来店されててね。健康のために歩いて来た、てどれくらい外を歩かれてたのかわからないけど。来店された時にはもう体の中に熱持っちゃってたみたいで。でも、その時はそんなこと知らなくて、ぐったりされて動かなくなっちゃったから慌てちゃって」 年配の方だと持病を持たれている方も多い。 声をかけると、かろうじて受け答えはできていたので、なんとかその人から情報を聞き出そうと必死だった。 でも、居合わせた別のお客様が、見るに見かねて救急車を呼んでくれた。 「その時は、私スタッフなのに判断も遅くて何もできなくて、情けなくて」 「え、でも、そんなのわかりませんよ!」 顔が赤かったはずなのに、冷静に観察できていなかった。 お客様はキツかったはずなのに、と自分の行動を悔やんだ。 「どうやら、水分もあまり摂ってなかったっぽくて、脱水になりかけてたみたいで」 「うわ、水分摂らないのはダメですよ!高齢者って暑くてもやたら頑張りますよね?エアコンもあんまり使わないじゃないですか」 暑くてもやたら頑張る、という表現がちょっとおもしろくて笑いそうになった。 「頑張るっていうか、高齢になると、体温調節の機能が低下して、暑さや寒さに鈍感になるみたいよ」 「鈍感に……あ!おじいちゃんとかがお風呂の温度めっちゃ熱くしてるのって、そういうことですか?!」 「そうそう」
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