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「志桜里さん、なんで笑ってるんですか?」
その時指導してくれた人のことを思い出して、ついつい笑ってしまってたことに、指摘されて気づいた。
「あ、ごめんね。去年のこと思い出しちゃって」
「何か笑えるようなことがあったんですか?」
「去年、講習で実技を指導してくれた人がね、綺麗な坊主頭だったの!」
「え、それって、そんなおかしいです?」
「だって、30前後のいい大人が丸刈りって、あんまりいなくない?」
その人は、はじめは帽子を被ってたからわからなかったのだが、何かの拍子に帽子が脱げてしまい、焦ったように帽子を被り直してたのが少しおかしくて印象に残っている。
スキンヘッドは少し怖い印象を持ってしまうけど、丸刈りならむかし弟で見慣れていたので、怖さはなかった。
弟が小さかった頃、髪の毛は家で父にバリカンで刈られていて、常に坊主頭だったのだ。
小学校高学年くらいから嫌がってたけど。
刈りたての頭って触ると気持ち良くて、よく撫で回していて、鬱陶しがられた記憶がある。
それを思い出して、ちょっと撫でてみたい、なんて思ってしまったのだ。
早苗ちゃんは、
「私、坊主頭って触ったことないです。志桜里さんの話聞いたら、撫でてみたくなりました。坊主頭の男の子探して、触らせてもらおうかな」
なんて言っている。
本気じゃないだろうけど、突然見ず知らずの人に、頭触らせて!なんて言われたら気持ち悪がられるし、それはもう変質者案件だから絶対やめて欲しい。
そんな話をしながら本社に戻って、調査結果を部長に報告した。
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