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迷う心
「私が馬車馬のように働いてる時に、そんなことになってたなんて…。ごめんね、話聞いてあげられなくて」
「ううん。だって美奈、顔が死んでたもん。相当疲れてるな~て思ったら、誘えなかったよ」
仕事上がり、やっと美奈とご飯に来れて、篤志の話を聞いてもらっていた。
「確かにキツかった!今企画してるスタンプラリーがさ、出す案出す案突っ返されて。ショップ側の反応もいまいちでさ…。新しい客層呼びこまなきゃいけないんだから、毎回同じような催しやったって意味ないでしょうが!やってみなきゃわかんないっつーの!イベントなんてホント博打だわ」
「博打って…、相当な金額動くから、慎重にもなっちゃうんじゃない?」
キツいと言いつつ、楽しそうにしてるってこと、本人は気づいているのかな?
「でも、促進部は凄いよね!最近は参加型のも結構あって楽しいもん。ホントお疲れ様。で、もう落ち着いたの?」
「ん~、まぁなんとか、形にはなったかな、て。でも、途中で一日くらい息抜きに志桜里とご飯行けば良かったよ~。かなり煮詰まってたから」
そんな余力はなさそうだったけどな…
きっと、私に気を使っての発言だ。
「ありがと。でも、もう解決したから、大丈夫だよ」
「それにしても、その傲慢男の態度の急変が信じらんないわ」
「そうだね。私もびっくりした。でもたぶん、出会った頃の篤志は、あんな感じだったかも。イヤな思いで上書きされちゃってたけど」
「そっか。……ま、何もなくて良かったよ」
「何も……」
何もなかった、という言葉に、つい黙り込んでしまった。
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