迷う心

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「気にするなって言われても、本当に付き合ってるわけじゃないんだから、気にしないわけにもいかないし。そういう意味で言ったつもりだったけど、坂上さんは、私が坂上さんのことが好きだと思ったみたいで……」 キスされたことを報告するのを躊躇(ためら)った。 それなのに、勘の鋭い美奈に言い当てられてドキッとする。 「志桜里、もしかして坂上さんに手出された?」 「っ!」 「そっか。やっぱ家まで上がり込んだらそうなるか」 「ち、違うよ!ヤッてないからね!」 「何慌ててんのよ。私、そこまでは言ってないわよ」 焦って否定したものの、美奈は追加でデザートを頼もうとメニューを見ている。 「で、どこまでやられちゃったわけ?」 「………キスだけ。でも、イヤだったから必死に抵抗したの!気が付いたら泣いちゃってて、それで、帰ってくれたんだけど」 「ふぅん。イケメンでもイヤだったか……」 「だからイケメンは関係ないってば」 あの時、力で抑えつけられて怖かった。 あんな坂上さん、今まで見たことなくて、知らない人のようだった。 「それで……」 「それで?」 「なんか、坂上さんにキスされた時は凄くイヤだって思ったのに、前に好きでもなんでもない人にされた時はイヤじゃなかったから、なんでだろうって考えてて…」 「それって、あのワンナイトの?」 「そう」 坂上さんに恐怖を抱いてしまったのは、強引にされたから? 進藤さんがイヤじゃなかったのは、優しかったから?
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