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気になるあの娘【進藤 視点】
この腕に志桜里を抱いた時のことは、まだしっかり脳裏にやきついている。
あの日は天にも昇る気持ちだった。
本当は彼女を抱くつもりじゃなかった。
そうなれたらいいな、と思ってはいたけど、急ぐつもりなんてなかった。
でも、彼女も求めてくれたので、同じ気持ちなんだと思った。
だけど、どこで間違えたのだろう。
そんなことを考えていたので、後輩の田上に話しかけられていたことに、反応が遅れた。
「進藤さん、ズルいっす」
「……ん?何が?」
「この23歳女性、かわいかったっすか?」
田上は、昨夜の搬送記録を差していた。
「はぁ?何言ってんだよ。搬送者だぞ」
「だって、オレいっつも年寄り子どもで、若い女のコ搬送するコト滅多にないっすもん。搬送者がかわいいコならテンションもアガるじゃないっすか!」
まぁ、わからんでもないが…
「だからと言って、そのコとどうにかなるわけじゃないだろ」
「いーや!危機的状況の時にスマートに介抱してくれたら、この人素敵~とかって恋に進展するかもしれないじゃないですか!」
「進展ねぇ…………はぁ〜………」
恋に進展と聞き、また彼女を思い出して溜め息が出てしまった。
自分だけ恋に進展しても意味ねーよなーと。
「でっかい溜め息!なんだよ、辛気臭せーな」
そう言って声をかけてきたのは前島先輩。
「女か?女だろ?」
前島さんがニヤニヤと肩を組んできた。
「そんな時はパーッと飲もうぜ!お前今日はもうアガリだろ?夜、ちょっと付き合えよ」
「今そういう気分じゃないんですよね~」
今飲みに行ったら深酒する自信しかない。
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