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そんなある日、思いがけず彼女を発見した。
やっと見つけた!と舞い上がったのだが、何やら様子がおかしい。
客だろうか?男と揉めているっぽい。
困っているようだったので、声をかけようかと迷っていたところに、もう一人男が現れ、志桜里の彼氏だと名乗った。
頭を殴られた気分だった。
確かに、彼氏がいない、とハッキリ聞いたわけではない。
いつから付き合っているのだろう?
俺に抱かれた日は?
そしてふと思い出す、彼女が去り際に残した言葉。
『絶対なりませんから!!』
あれは、彼女にはならない、ということだったのではないか。
彼氏がいたのなら、俺とのことは忘れたい過ちだったのかもしれない。
だったらなぜ俺に抱かれた?
断る余地は何度もあったはずだ。
好きな人がいるのに、他の男に抱かれるような、そんな器用な子なのか?
いったいどういうつもりで俺に抱かれたんだ?
……わからん。
そう思いながらぼんやり見ていた。
解決したのだろうか。
揉めていた男が帰って行き、志桜里と彼氏だという男がまわりの客に頭を下げていた。
あの男もこの店の従業員だったんだな、と思っていたら、ふと志桜里がこちらを見てきた。
目が合った。
酷く驚いた顔をしている。
彼女は今、何を思っているのだろう。
一晩関係を持っただけの男が現れて焦っているのかな。
彼氏に浮気をバラさないで、話かけないで、とか。
忘れたい過去の過ちを、思い出させてしまったのだろうか。
彼女が男に話しかけられ、視線が外れる。
おそらく、俺は歓迎されてないのだろう。
……帰ろう。
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