気になるあの娘【進藤 視点】

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講習も、メモを取りながらとても真剣に聞いていた。 実技をする際、二人一組になってもらうのだが、参加者が奇数だったため、彼女が一人になってしまった。 なので、俺が一緒にすることになった。 しかし、男が苦手なのか、俺が近づくと固くなった。 できれば、女性に代わってもらいたかったのだが、今回担当するはずだった女性隊員の代わりに俺が入ったので、あいにく女性の指導員がいない。 俺は、無理せずできる範囲で、と提案したのだが、彼女は顔を強張らせたまま「大丈夫です」などと言う。 なので、極力触れずに距離を取って指導した。 意図せず触れてしまった時は謝罪して、できるだけ実技演習に集中できるようにした。 はじめは緊張していた様子の彼女だが、徐々に実技に集中するようになった。 講習終了後には認定証が発行され、その期限は三年。 だけど、人は忘れるものなので、技能維持のために二年ごとに再受講することが望ましい。もちろん毎年受講したっていい。 そう言って、彼女に認定証を手渡した時「また来ます!ありがとうございました!」と嬉しそうに笑った顔が印象的だった。 その後、あの笑顔が忘れられず、どこかで会えないかな、と思ったものの、接客業としか聞いてなかったし、探しようがないので、いつしか記憶の片隅に追いやられていた。
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