629人が本棚に入れています
本棚に追加
講習も、メモを取りながらとても真剣に聞いていた。
実技をする際、二人一組になってもらうのだが、参加者が奇数だったため、彼女が一人になってしまった。
なので、俺が一緒にすることになった。
しかし、男が苦手なのか、俺が近づくと固くなった。
できれば、女性に代わってもらいたかったのだが、今回担当するはずだった女性隊員の代わりに俺が入ったので、あいにく女性の指導員がいない。
俺は、無理せずできる範囲で、と提案したのだが、彼女は顔を強張らせたまま「大丈夫です」などと言う。
なので、極力触れずに距離を取って指導した。
意図せず触れてしまった時は謝罪して、できるだけ実技演習に集中できるようにした。
はじめは緊張していた様子の彼女だが、徐々に実技に集中するようになった。
講習終了後には認定証が発行され、その期限は三年。
だけど、人は忘れるものなので、技能維持のために二年ごとに再受講することが望ましい。もちろん毎年受講したっていい。
そう言って、彼女に認定証を手渡した時「また来ます!ありがとうございました!」と嬉しそうに笑った顔が印象的だった。
その後、あの笑顔が忘れられず、どこかで会えないかな、と思ったものの、接客業としか聞いてなかったし、探しようがないので、いつしか記憶の片隅に追いやられていた。
最初のコメントを投稿しよう!