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それから季節が流れたある日、大学の時の同級生である木原から連絡があった。木原とは学部は違うものの、友人を介して仲良くなった。
木原は何年か前、転勤になってこの地を離れたのだが、出張でこちらに戻ってきてるというので、俺の非番の日に合わせて、久々に飲みに行こうという話になった。
居酒屋で席についた時、隣が女性客二人だったので、こんな騒がしい大衆居酒屋に女二人だけって珍しいな、と思いながらも、気にせず旧友との話に盛り上がった。
がやがやと煩い店内だが、隣の話はなんとなく聞こえる。
どうやら仕事のグチをこぼしているようだ。
「おとなりさん、ずいぶんストレス溜まってるみたいだな」
木原が言うのも頷ける。
だんだんと声のボリュームが上がってきているのだ。
盗み聞きするつもりはないのだが、声のトーンが上がってきて、自然と会話が耳に入ってくる。
話の内容が少し気になり、つい目線を横に向けると、斜め前に座る女性とばっちり目が合ってしまった。
そのまま逸らすのもどうかと思い、愛想笑いしながら、
「大変そうですね」
と声をかけた。
すると、目が合った女性の向かい側に座っていた女性、つまり、俺の隣にいる女性が反応した。
「わかりますぅ~?!」
ずいぶん酔っているようだが、その女性を見て驚愕した。
彼女だ……
もう半年くらい前のことで、記憶が薄れつつあったが、彼女だ。
以前と髪型が少し違うし、酔っていて目が据わっているが、間違いなく彼女だ。
そこから木原も話に乗っかってきて、斜め前の女性の承諾を得て、一緒に飲むことになった。
予想外の急展開に浮かれていた。
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