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軽く自己紹介をしたのだが、彼女たちは下の名前しか名乗らなかった。
どうやら百貨店勤務っぽいのだが、働いてる店も教えてくれなかった。
警戒されているのかも……
そして、驚くのは彼女だ。
以前は確か、男が近寄ると顔が強張っていたのだが、酔っているからだろうか。以前とは別人のように男性に対して怯えることなく、距離が近い。
彼女の話を聞きながら、接客業も大変だな、なんて思っていた。
それに、セクハラは許せない。彼女が怒るのも無理はない。
怒ったり泣いたり笑ったり、いろんな表情が見れていいのだが、完全に酔っぱらいだ。
俺を僕のようにアゴで使うのが意外過ぎて面白い。
それになにより、酔って頬が上気しているし、目もトロンとしていて、困ったことに色気がある。
可愛い彼女の、取るに足らない命令などお安い御用だ。
だけど、あまりの泥酔ぶりに、一緒に来ている友達の方が気を使ったようだ。
「ちょっと志桜里!もういい加減にしな!」
と言って彼女を窘める。
普段は全然こんな感じではなく、今日はちょっとおかしい、と言っていた。
そのお友だちの美奈さんが、もうそろそろ帰ろうと帰宅を促すも、彼女はまだ飲みたいと言って、美奈さんを困らせる。
空気を読み取った木原が、美奈さんの「明日も仕事」に同意したので、俺もお開きにしようと言って帰り支度をする。
彼女の足はフラフラしててまともに歩けないようなので、支えて移動する。
その際、美奈さんに荷物をお願いし、木原に彼女たちの分の会計もお願いして金を出そうとしたが、俺が誘ったからと言って木原が全額支払ってくれた。
男前過ぎる。今度何かの機会に返そう。
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