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さて、せっかく巡ってきたチャンスだ。どうにか関係を繋ぎ留めたい。
しかし、この泥酔状態の彼女に連絡先を聞き出すのは至難の業のように思える。
それなら美奈さんを介して、教えてもらえないだろうか。
そう思っていたところに、タクシーがやってきた。
タクシーへの乗車を促す美奈さんに対し、酔っ払いが反抗する。
「いやぁらー。あらし、しんろーとかえるぅ〜」
と言って、俺の腕に抱きついてきた。
顔がニヤけそうになる。
だが、こんな持ち帰りみたいなことはダメだ。
あ、でも、美奈さんと一緒に送って行けば家がわかるか。
もしくは、そこで美奈さんに聞き出そうか。
「あ~、じゃあ、俺も一緒に送るよ」
そう言って、くっついてくる志桜里をなんとかタクシーに乗せ、自分も乗り込む。
そうして美奈さんにも乗るように声をかけた。
だが、またしても酔っ払いが爆弾を落とす。
「えぇ〜、みなはいいよぉ〜。あしら、はやいんれしょ〜? はやくかえんなぁ~。らぁ~ねぇ〜、ばいば〜い。あはははは」
ピシッと固まった美奈さんの額に、怒りマークが見えた気がした。
「お客さ~ん、乗るの乗らないの?」
タクシーの運転手が急かす。
「美奈さん!早く」
「……進藤さん。申し訳ないですが、志桜里をお願いできます?」
荷物を俺に渡しながら笑顔でお願いされるのだが、その笑顔が逆に怖い。
「え!それは困るよ!美奈さんも一緒に来てよ!その方が安心でしょ?」
「いいえ。こんなコもう知りません。煮るなり焼くなりどうとでも。こんな酔っぱらいでよければ好きにしてください。じゃ、運転手さん、行ってくださーい」
そう言ってドアを閉められる。
ウソだろ……
結局この後、彼女と一晩共に過ごすこととなった。
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