584人が本棚に入れています
本棚に追加
/139ページ
「はい、お疲れ様でした! えっと、横田志桜里さん?」
田上さんが、名前を確認しながら認定証を渡してくれる。
「はい。今日はありがとうございました」
「もう帰ります?」
「はい?」
「これからご飯でもどうですか?」
「え、でもお仕事中ですよね?」
「オレね、朝まで当直だったんですよ。で、この講習は残業みたいなもんなんです。だから、今から休み!」
「そう、だったんですね。お疲れ様です」
「だから、ご飯行きません?」
その時、後ろから別の声が聞こえてきた。
「こら!田上!署内でナンパすんなー」
どこかで聞いたことあるような声……
その声に緊張しつつ、おそるおそる振り向くと、そこには、
会いたいかもしれない、と思っていた進藤さんがいた。
ドクン
進藤さんだ……
ホントに進藤さんだ。
まさかこんなところで会うなんて……
進藤さんも私に気づいてびっくりしている。
また会えたら謝罪しなきゃ、なんて思っていたのに、いざ本人を目の前にすると、胸が詰まったようになって、なぜか言葉が出てこなくて…
ただ、進藤さんを見て早鐘を打ってしまっている。
これってやっぱり…
二人とも、何も言葉を発せぬまま見つめ合う。
まわりはザワザワしているはずなのに、二人の間だけ別世界のように、ただただ見つめ合う。
もう会えないかも、と思っていたので、なぜだか嬉しくて泣きそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!