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「え…」
そんな今にも泣きそうな私の表情に、進藤さんが慌てる。
「えっとー……二人ってもしかして、知り合い…ですか?」
私たちの様子を見ていた田上さんが、進藤さんと私を交互に見ながら声をかけてくる。
それに対し、私から視線を外した進藤さんが答える。
「あー、田上。この子はダメだ。…彼氏がいる」
?!
やっぱり誤解されてる!
違うのに!
そう思っても、なかなか声が出ず、フルフルと首を振って、なんとか伝えようとする。
そんな私を苦しそうな表情で見たあと、
「講習、受けに来てたんだね。……お疲れ様でした」
と、立ち去ろうとする進藤さん。
背中を向けられ、また会えなくなる、と思って、そこでやっと声が出た。
「待って!進藤さん!」
進藤さんが立ち止まる。
「ご、誤解……です」
二人の只ならぬ雰囲気に、田上さんが
「え~と……オレ、お邪魔、かな……」
と後退りする。
「話、……聞いて、くれませんか?」
進藤さんはゆっくり振り返り、切なそうに私を見つめる。
何かを言おうと口を開きかけた時だった。
署内に突然大きな音が鳴り響き、「出動準備」などというアナウンスがされた。
「ごめん!行かなきゃ」
進藤さんはそう言うと、踵を返し、
「田上!悪い。その人に俺の連絡先教えといて!」
そう言い残して走って行ってしまった。
気が付けば涙を流してしまっていたようで、そんな私に田上さんがそっと話しかける。
「大丈夫ですか?……えーと、とりあえず、このまま帰せないので、どっか場所移動しましょうか。あ、安心してください!進藤さんのお知り合いのようですから、変なことはしませんので!」
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