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1・切欠
小雨が夜の街を降り注いだ。
基本賑やかな場所ではあるが、少し人混みな所を離れただけですぐに静寂に変わり、あたりは闇黒に包まれる。照らしてくれるのは5メートルずつ離れて立てられた街灯と、いつ消えるかわからない家の照明ぐらいであった。
ブレンは雨に濡れながら意味もなく壁に身を託して立っている。
自分の漆黒の髪とダウンジャケットが濡れることに対してはなんとも思わなかった。
コーラー味の飴を口に咥えながら姉が戻ってくるのを待っている。
こんな気味悪い場所は好みではない。できれば彩る観覧車のある場所が好みだった。心の中はまだ幼少期に止まっている。
ローレは狭い通りから出てきた。少しだけ服が汚れている。
「終わったか?」
ブレンは冷淡に聞く。
「ええ、お待たせ」
ローレは彼女の綺麗な淡黄蘗色の髪を肩にの後ろにやり、スカート着いている葉っぱを軽く叩いき落とした。
「猫の世話はいいが、俺の世話も忘れんなよ、こっちもお腹空いてるぞ」
ブレンは不満げな顔をして歩き出し、
「全く、それぐらい自分で解決しなさい」
姉も彼の後を着いて歩き出した。
弟が自分のことをほっといて行動できる人じゃないぐらい、姉は承知している。とはいえ、少しでも姉である自分に頼らず、自立してほしかったため、彼女は心を固くした。
2人は小道を出て、賑やかな道路に戻った。
特に理由もなく、その場を楽しむ。雨を特に気にせず、できる限り人の多い所へ無意識と目指していた。
意味もなかった。それが日常である。心のどこかで、逃げ場を求めていたのかもしれない。
やがて家に戻ると、2人は送り付けられた請求書を読み始めた。
金銭には困らなかった。
財産の所有は半分ずつ分け与えられているからと言い、2人は世間でよくあるような不仲兄弟ではないため、ひとつにまとめて一緒に使っている。姉がきちんとしているおかげで、トラブルにあったことは1度もなかった。
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