3・帰還

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本当の姉は元々冷酷な女性ではない。本当の彼女は母に似ている。厳しい時があっても、姉らしい所を除けば、普通の少女と同じだったのだ。 彼女はパーティ行く前の母に言われている。 「他人に対して警戒を張ってもいいから、ちゃんと自分たちの身を守るのよ?弟のことも任せたわ」と。 姉は人に警戒を張るために、このような方法を取っている。弟には昔以上に厳しく接している。 弟は普通の少年と変わらず思春期に入っていた。姉を愛していても、感情を上手く伝えるのは苦手である。その為彼はツンデレとゆうか、いや、この場合はツンデレであろう。 その為彼は姉に対してだけツンデレな態度を取っている。 「そんぐらい言わんでもわかる」 彼は自分が男らしく見られてないのに腹立っていた。ただ今回は絶対自分の力で姉を守るのだと決意している。 やがて彼らはタクシーを降りた。 ウィルソン卿は姉によった叩き起された。 かなり痛そう。 弟はそんな場面を無視して自分たちの屋敷を眺めていた。彼はいつもそうだ。美しいものには見惚れる。ただ姉でもない限り見惚れてもなにも湧いてこない。 突如入り口から40代半ばのメイドが走ってきた。彼これ10年経っていても、その特徴的な赤髪は忘れられることはない。 「まあ!これはローレお嬢様とブレンお坊ちゃま!やはり生きていたのねえ!お帰りになるのを信じ続けて本当に良かったわぁ!」 驚きで現状に追いついていけてない二人の手を握って感動し、そしてローレに叩き起こされてタクシーから降りたばかりのウィルソン卿を見つけて、 「ウィルソン様またお酒をお飲みになさったのでしょう?匂いがすごいわ、全くお二人様がせっかくお帰りになられたのにこの有様で」 ようやく現状を掴めたローレは小さい頃自分たちのお世話を良くしてくれていたメイドがまだこれほど元気を保っていたことにとてもうれしくなった。 「クレアさん、ただいま」 ローレはもう一度クレアの両手を握った。 ブレンは何年ぶりにようやく見られた姉の嬉しそうな微笑みを見てときめいたと同時に、母の事を思い出す。母も姉と同じような口調と声と顔でそうクレアに言ったことがあったからだった。 姉は母に似ている。 「10年ぶりなのに全く変わってないな、さっきまで食べに行ってたよ」 ブレンも上機嫌になり、背筋を張って意気揚々としていた。 「お二人様お帰りなさい、まあ大きく立派になられて、お坊ちゃま髪伸びたわね、あら、お嬢様前髪どうなさいましたの?」 クレアは青色の目を不思議そうにキョロキョロ動かしている。ウィルソン卿は今更それに気づいたかのように驚く。 「ああ!そうか、前はたしか…」 ローレはウィルソン卿の言葉を遮った。 「左側は剃ったわ。あの時母に姿を変えるよう言われていたの」 小さい頃から仲の良い付き合いでもあったので、ローレは優しめな態度でクレアに説明した。母は確かに、 「シュルツ家の人だと分からないようにしなさい」と命令していた。 姉は最初髪を弟と同じ色に染めてそして左側の前髪だけを剃ったのだが、日本で何年か経ってくると、黒髪の色は落ちるが、剃った所は戻らない。 弟は髪を染めるのが嫌いだったので、その代わりに後ろ髪を長く伸ばして一つに結ぶようにしている。 「確かに昔は左側があったなぁ、さぁ、早く屋敷に戻ろう、ここで立ち話しても寒くて風邪ひくよ」 ドイツの冬は極寒だった。 日が出ていると言い、大して温度は変わらないし、暖かくもならない。ただ植えている花は寒さに強いものばかりなので、庭は依然として綺麗だった。
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