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「では次に、」
ウィルソン卿は今度ノルベルト変死事件を語り始めた。
「私は彼が亡くなる前の日にここに訪れた時に、ふっと彼が部屋で手紙か何かで文句つけて怒鳴っているのを聞いたんだ。その事は警察にも話してはいたが、
「またこれか!もうこれで5通目だ、いい加減しつこい!けしからん奴、そのぐらいの事は自分でなんとかできんか!わしは関係ないぞ!」
とかなんとか怒鳴り散らしてて。当時はなんのことだかさっぱりわからなかったけど、その翌日に亡くなっていたからね、当時のメイドたちも相当動揺していたよ。みな彼が文句をつけていた手紙が原因だと思ったが、彼によって燃やされてしまっていてね、内容はわかりようがなかったよ。でも今となって考えると彼は倒産した会社と金のことで揉めていたのかもね」
ローレは静に目を閉じながら聞いていた。本物の探偵は考え事をしている。ブレンは目の前の事実だけを捉えている。
「ならやつらがやっただろ」
念の為もう一度書いておくが、これは変死事件であるのだ。
「死に方が訳わからないのは君も知っているだろう。それに誰も不審な人見かけてなかったよ」
ウィルソン卿はチェアにもたれ掛かった。
「んなのはどうでもいいだろ、犯人がわかればいいさ。こうゆうのは大体他殺だからな」
噛み合っていない会話に、ウィルソン卿はうんざりした。
「もし本当に死因がはっきりしているなら変死事件にならないよ?」
ローレも到底見てられずに再び威厳を振る舞う。
「よしなさい」
たったの一言だったが、その響きは天井を貫いた。
「まず、ブレン、お前は事件のファイルをよく読み直せ、あと、ウィルソン卿、話を戻してください」
ウィルソン卿は「あっ!」と微笑んで口を開き、話を戻した。
「元々私が彼と知り合ったきっかけは、実は君たちの母、綾香さんのお店からだったんだ。私は当時偶々そこで花を買いに行ってたんだ。ノルベルトさんは彼女の店の常連らしくて、仲が良かったんだ。ノルベルトさんとは同じ趣味があったからすぐ打ち解けられたよ。君たちの母は花よりも美しかった。植物のことをなんでも教えてくれててね、親切で人も優しくて、笑顔が太陽みたいで輝いてたよ、それに…」
ローレは咳払いで彼にブレーキをかけさせた。
「えっと、とにかく、それが故によく彼らの家を訪れていたよ」
なんとか体制を整え直した所で、
「トントン」とドアが叩かれ、みんなが一斉に扉の方へと顔を向く。
「皆さんお菓子はいかが?紅茶も用意しておりますわ」
ドア越しにクレアが3時のおやつを勧めて来ている。
「そうだな、庭へ行こう!ここじゃあ食べずらいし、君たちも庭を見てみたいだろう」
限られた空間からようやく広々とした庭へ行けるとにブレンは心の中で喜んだ。彼は広いところが好きである。
どこか気まずい雰囲気を漂わせながらみんなで庭へ出た。
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