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栗色の髪にに茶色い瞳、彼女は10年経っていても依然として綺麗なままだった。
クレアは彼女を連れてきた。
「あなた達お忘れにならないでしょ。エリシア、ほら、この子達が帰ってきたのよ!」
エリシアは驚きのあまり反応は大袈裟ではなかった。
「ま、まあ!おかえりなさい!夢でも見ているみたいですわ」
今度はウィルソン卿が状況についていけなくなっている。
「えっと、ブレン、いや、エリシア?お嬢がお尋ねしたいことがあるそうで?」
大きく変わった姉弟を見て首を傾げるが、でもさほど気にはしていない。
「そうですの、どのようなことでしょう」
ブレンは話を気にせずに皿からシュペクラティウスをひとつ取った。
「私たちの両親について話して」
エリシアは最初、「全て警察にお話しましたわ」と訴えかけるような目付きでいたが、やがて、
「分かりました」と開き直った。
「ご主人様はあまり裏庭の方へお越しにならなかったので詳しくはわかりませんでしたが、奥様の方なら」
「ええ、それで結構よ」
ブレンは右手に持ったままだったシュペクラティウスをこっそりと口に入れる。
「奥様はよく裏庭に来て脅迫のことを話に来てくださいましたわ、例えばどの様に対策するかを。お二方を日本に逃がすという案も、私と相談した上で決めたことです。パーティーの日お屋敷を出る数分前に私の所へ来まして、いきなり、「私とアイロスは危険な仕事に出るから、子供たちをお願い」と申しになって、すぐ去ったんです。奥様を見かけたのはそれが最後でした」
彼女は警察に尋問された時と同じような答え方をした。
「私だけが脅迫のことを知らなかったなんて、自分が情けないわ」
クレアは再び自分を責めた。
「知っていることはそれだけ?」
ローレはコップを手に持った。
「それだけじゃありませんわ。奥様はこの脅迫はあの家族の仕業ではないかと、つまり、奥様のご迷惑をわざとしている可能性があると仰っていました」
「確かに」
ウィルソン卿はうんうんと納得している。
「あいつら暇かよ。ていうか、そこはやる気満々なんだな、俺らの世話は全くしなかった癖に」
ブレンは偉そうに足を組んでは手すりに肘をつけ、頭をこつんと指の関節の上に乗せた。
「仕組まれた可能性もあると、あとは?」
「かなり前からの疑い、とゆうよりも1つの噂に過ぎませんが、このお屋敷の誰かが何年か前にノルベルト様によって倒産された会社の社長の娘がらしいですわね、私は違いますけど」
「そなのか?!私は全く知らんぞ!」
「裏切り者がいる、ってことか」
「その噂は、どこから流れてきたの?」
ウィルソン卿1人だけが大袈裟だった。
「流れてきたとよりも、奥様本人が仰ってたことですが…」
「あっ!それなら私も聞いたわ。確か、「もしかしたらこの家に怪しいメイドがいるかもしれないわ」と。その時私は「そんなわけないじゃない!」って信じてなかったけど」
「それ、いつのこと?」
「パーティにいく2日前でしたわ」
「私もそうでした」
メイド2人は顔を合わせた。
夕日の光が丁度この時雲を貫通し、庭一面がオレンジ色の輝きに包まれて黒い影がよりくっきりとなって来ている。
「なんで急にそんなことを言ったんだ」
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