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「そうね、2日前ということは、それを知ってしまったことが失踪と関係しているかもな」
ローレは紅茶を飲み干した。
突然冷風が肌を通り過ぎると、ブレンは身震いした。
「寒くなったな、中に戻ろうぜ」
ウィルソン卿は少し残念がったけど、すぐに肩をくすめて立ち上がった。
「じゃあ戻るとしょうか!」
「では、エリシアさん、また後ほど」
「花壇は触らないでね!もうお手当てしてあるから」
「かしこまりました」
エリシアはぺこっと頭へ下げた。
シュルツ姉弟とウィルソン卿とクレアは横1列に並んで玄関に戻る。
オレンジ色の輝きが段々と消えてくるに連れて、辺りも暗闇に包まれてきた。前庭の階段や花、木、入り口などの黒いシルエットがより目立ち、肌寒い風が吹き、その寒さは肌をすり抜けて骨まで届いた。
ウィルソン卿は紳士らしくドアを開けて3人を先にいれた。
「どうぞ、皆さんお先に」
いかにもホテルのオーナーのような態度で微笑んでいる。
「まあご丁寧にありがたいですわ」
クレアだけがその態度に応えていた。
彼らはホールに戻りった途端、2階から階段へと向ってくる足音と声がホールに響く。
「いいのよ、ルーシー。貴方は1階でしょ?ここの掃除は私だけでも十分ですわ」
「でも1人じゃ大変ですし、1階の掃除ならもう終わってますから、ここは私が…」
メイド2人は2階の階段ホールから信じられない光景を見下ろしている。彼女たちは口が空いたまま体に魔法がかかったように固まってしまった。
「ローレお嬢様とブレン様?!」
「まさか…似ている方なだけ?でも、ここに居るということは、はやりそうじゃない?」
そんな半信半疑な会話を続いていると、
「二人ともそこに居たのね!ほら固まって喋ってないで早く降りてきなさい、帰ってきましたのよ!ルーシーとサラよ、屋敷のお掃除をしていた」
「一体このくだりを何回見ればいいんだ…」
軽く不満を抱きながらも2人が前後になって階段から急いで降りてくるの姿を目で追っていった。
ルーシーは黒髪で、コンタクトをつけている。昔のように髪を三つ編みにしていた。サラは金髪で、左目の目元にホクロがある。
同じように世辞を交わし、ローレは二階の自分達の部屋に行ってみたいと言い残して(正面から見て)右側の階段から駆け上がっていった。
ブレンは行かずにウィルソン卿とメイドたちと共に2階を見上げて姉が戻ってくるのを待っつ。昔は階段を降ったり上がったりすることにテンションが上がったが、今ではそれすらもめんどくさがっている。
ウィルソン卿が煙草を吸い始めたのを見て、自分のも取り出した。
「君の飴?それとも姉から貰ったのかい?昔から君がそれを食べていたのをよく見ていたよ。アイロスは毎回私と出かけて戻ってくる度に、お菓子の店に行っては君の為にそれを買っていたな」
「俺の飴だ。悪いか?」
ブレンは彼の煙草を軽蔑した目で見つめながら反抗的な態度を取る。
「別に何も?むしろ私の飴の方が悪いよ」
ウィルソン卿は微笑みながら煙を吐き出した。
メイド3人はお互いの顔を見ながら全力で笑いを抑えた。
ブレンとウィルソン卿は実に滑稽とも言える程奇妙な組み合わせだった。
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