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ローレは二階の右側の最初のドアを押して入り、電気をつけた。
中はルーシーとサラによって埃一つなく綺麗に掃除されていた。黒いスーツケースはクレアによってベットの側に置かれていた。
ローレはゆっくりとベットに近づきながら寝室を見回す。
入り口右側からのいかにもヨーロピアンクラシックのコンソールテーブルが置いてあり、その上には黄色のチューリップが入った花瓶と古びた分厚い本が三冊綺麗に並べられ、奥へ進むと、左から三面鏡のドレッサー、開閉式のライティングデスク、その上に置かれたステンドガラスランプ、ウォールナット材のワイドダブルベット、そして3段ある低めなタンスがあった。
ローレは懐かしき家具を左から時計回りの順で一個づつそれに対する記憶を蘇っていった。
彼女は頭を上げる。
天井にはキャンドルスタイルのシャンデリアが燃えている。
それから視線を地面に落とす。
黒いスーツケースがある。
彼女はしゃがんで鍵穴をチェックした。
こじ開けられた跡がある。
急いで開けて荷物を確認するが、幸いなにも持って行かれられず、持って行かれるようなものもない。
逆側から階段を降りると、ウィルソン卿とブレンがいつの間にか意気投合してお互いの自慢話で盛り上がっていて、彼女の存在にすら気づかなかった。
「貴方たち、お嬢様がお戻りになりましたわよ」
クレアがようやく2人を止めた。
「ああ!これは失礼」
ウィルソン卿は持ち前の紳士らしさを取り戻した。
「そういや後1人メイド家の中にいなかったっけか?」
「ええ、確か食堂に…」
「レイラのことですわね!もちろんいますよ、この時間ならきっとキッチンね。行きましょ!」
ローレは邪魔をしたくないから止めたかったけど、クレアはもう先に行ってしまったから、仕方なく付いて行った。残りの2人コンビもサラとルーシーを残して後を続いた。
「レイラどこにいる?まあいい匂い!何を作っているの?」
キッチンから香ばしいスープ匂いが漂う。
「カトフェルズッペ(じゃがいものスープ)ですわ。あれ、私玉ねぎをどこに置いちゃったんだろう、さっき洗ってここら辺に置いたはずなんだけど…」
どうやら玉ねぎのことで忙しそうだ。
「それは後にして!私が手伝うから、それよりもお客様よ、ほら」
お客様とされた家の主の2人が入り口に立っている。ブレンは小さい頃入ることを許されなかったキッチンを興味津々にキョロキョロしていた。
「ああ、お久しぶりです!元気で居てくれて良かったですわ!」
レイラは鍋の中のスープと玉ねぎの行方で手一杯になりながら冷蔵庫を開ける。
「ちょっと、ブレン!勝手に入るな」
ブレンは挨拶された後キッチンに入った。
「ん?別にいいだろ包丁触わってねぇし。あと、玉ねぎならここに」
「それだわ!ありがとうございます!」
手に握っていた洗いたての玉ねぎを渡した。
圧倒的に高いブレンに対してレイラとの身長差は実に可愛いらしい。
「今は忙しそうだなあ、私も手伝いましょうか?」
「いいえ、あと少しのところですわ、テーブルの方で待っていてくださいね」
そうして皆揃って1番奥のダイニングルームへ向かった。
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