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「これはまた可哀想に。おい検死官、そこの遺体を確認してくれ」
そこそこ中年の検死官が確認に入ると、
「絞殺です。凶器は布のようなものだと思われます。死後12時間は立っていますね。犯行時間はまだ正確には言えませんが、凡そ夜中12時から1時頃です」
いかにも刑事ドラマのような展開が始まった。
「みんなが寝てる間か、それじゃあ証言掴みずらいな。よしっ。とりあえず、遺体を回収してくれ、現場検証するぞ」
撮影鑑識官がカメラをパシャリとさせる音や、指紋採取鑑識官がお風呂に指紋検出用ハケを使ってる光景、場所ごとに置かれるアルファベットパネル、更に「KEEP OUT」の文字が書かれた黄色いテープ。
鑑識官たちが現場を鑑識している光景で、ブレンは不謹慎にも、
「推理ものみてぇだすげえ」
と思ってしまている。
「みなさん、彼女がお風呂を使っていても頭のネジが外れない限りこんなことにはなりません。見た通りこれは立派な殺人です。なのでその時みなさんの行動を一人一人伺いたします。まず、シュルツ家のお2人、1時頃は何をしていましたか?」
写真や絵画が並ぶリビングルームに一勢集まってる光景は推理小説そのものだった。
ただ他所から見たらブレンはいつもと変わりない様子に過ぎない。
「寝てたさ。姉さんと」
恥ずかしいからか、倒置法で答える。
「それを証明してくれる人って言っても、共に寝てるだろうな。ではHerrウィルソン、思い出せますか?」
「私は凡そ11時に寝て、それまでは部屋で本を読んでいました」
敏腕警部、軽く頷く。
ただ、大抵の推理小説、特にローレのような頭のキレる探偵が居ると、例え名高くても探偵に負けてしまう。
「メイドの方々、証言をお願いします」
まず2階の掃除を担当するサラが口を開く。
「私はお嬢様たちが部屋帰った後、みんなで夕食のお片付けをしましたわ、多分1時頃よ、私は掃除用具がお部屋に置き忘れた事に気づいて、ウィルソンさんのお部屋を入りになりましたが、その時は寝ていました」
ルイス警部はこれでウィルソン卿の1時頃のアリバイを認めた。
ただ狼少年はそうならない。
「わかりました。Frau(女性への呼び名)ヴァイス、貴方はどうですか?」
彼女は急に自分が指名された事に目を大きくさせて答える。
「いいえありませんわ!メイドたちと片付けしてそのあとそのあと一時間ぐらい浴室でお布団のシーツを洗ってましたの。本当こんな恐ろしい事件が起こるとわかっていたならずっとそこに居ましたのに」
悔いの言葉を述べたのもこれで三回目。
「これは決して貴方の所為ではないですよ。どうか自分を責めにならずに」
そう慰めては顔をレイラの方へと向ける。
「では、Frauアシュリー、1時頃貴方は何をしていましたか?」
彼女は比較的落ち着いているが、緊張も見られる。
「夕食が終わったあと、キッチンで皿洗いや片付けをしました。時間はよく覚えていませんが、1時頃にはもう寝たと思います」
うんうんと警部がアリバイを整理する。
「みなさんが昨日の夜、何か気づいたことや、不審に思ったこと、ほんの些細な事でもいいんです。思い出していただけたら、こちらの方にいつでも来てください」
そう言って事情聴取は終わった。
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