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「なら、内緒にさせるようにしとけばいい、方法ならいくらでもある」
ブレンは身を乗り出した。
「待て」
ローレはさらに冷静な態度で彼を止める。
「この屋敷を売ることに理由は必ずある、我々が生存していることを確認したいのかもしれん。この屋敷を売っても、彼にこれと言った利点はない。せっかく用意された権利や財産を、捨てるような人でない。だとしたら、これは我々を呼んでいる可能性もある」
ブレンは新聞を乱暴に捨て、硝子のコップに入ったシュペッツィ(コーラをファンタで割ったもの)を飲み干した。
「なら、行ったほうがいいんじゃねぇか?」
と、彼は静かにコップをおいた。
「でも、どうして我々を、だとしたら、我々が生きている情報をどうやって手に入れたのか」
ウィルソン卿は知り合いではあったが、それでも彼女は警戒心を強めている。それとは逆に、ブレンはこのことに対して興味津々である。まるで敵と喜んで戦う騎士のようであった。姉は常にそんな彼を心の中では 「Schwarzer Ritter」(黒騎士)と呼んでいる。
「会えれば分かるだろ、なんせお前は強い、目だけで勝てるだろ」
彼の言う通りに、姉は目の視線だけで人を恐怖に落とすほどの力があった。彼女は弟と自分を守るために常にそれを使っているのだ。もちろん、身を守る術も備わっているが、良心からなのか、それはできる限り使いたくなかった。
「良いかブレン」
彼女は厳しく弟を見つめた。
「我々は勝つために行くのではない、真実を追求するために行っているのだ。我々自身のために、そして我々を待つ親のために行くのだ。お前は楽しんでいるでしょうけど、これは危険なことだ。命を落としかねない。消して抜かるな」
姉である威厳を見せつけられた以上、ブレンは彼女に逆らうことはできない。
「分かったさ」
ブレンは声を落として言ったあと、再び夕食の時間が戻り、ローレは静かに乱暴に捨てられたしわしわの新聞をじっと見つめた。
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