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「ブレン、起きなさい」
気づいたら彼は姉に揺れおこされていた。
ブレンは不満げに目を醒める。
目の前には機内食が置いてあった。
だがそれを食べたい気分ではない。
ただお腹は空いていたので、彼は不満を覚えながらも行儀よくナイフとフォークを手に取り食べ始めた。
何年ぶりに食べることになるか分からないグラーシ(牛肉の煮込み)を口に運ばせながら、コップに入ってるオレンジジュースを覗く。
姉が頼んだのだろう。
姉はすでに食べ終わっていて、目を閉じながら耳で映画を鑑賞している。
「また寝たのか」
ブレンは眉をひそめて、そして姉が頼んだオレンジジュースを1口だけ飲んだ。
外はまだ明るいのに、何故か彼はすでに1日を過ごしたような気分でいた。
特に窓の外はこれといってなにもない。青い空に白い綿飴が1面と飾ってあるだけだった。
昼食の時も過ぎ、ブレンはまた退屈になる。
彼も映画を鑑賞することにした。
映画はそれほど興味はない。彼は音楽の方を好んでいる。それでも彼はちゃんと目で映画を鑑賞した。
映画の人にほとんど感情移入はしないが、自立した精神的に強い女性が出てきたら、彼は無意識にもその女性と自分の姉の姿と照らし合わせて比べる。そして見終わった頃には「やはり姉さんの方が強い」と姉に肝心する。
でも姉の強さに肝心しているからと言い、ブレンはそれにも不満を覚えることがある。
自分は男なのにも関わらず、姉に守られているのが、彼はいつも惨めに思っている。本来なら自分の方が頼られるべきであるのに、弟であるからと強さに満ちた姉に甘えている。彼はこんな強さの足りない自分が嫌いで、本当は兄として生まれたかった。
ブレンは退屈そうにスクリーンに映る映画を見る。緊迫したシーンであっても、ブレンはとても冷静だった。緊張感を全く感じられず、もはや眠気すら感じていた。
映画自体が悪い訳ではない。ただブレンは一刻も早くこの飛行機から降りたいと強く願っているため、映画に集中できずにいた。
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