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ようやくブレンが待ちに待った時が来た。
その時は既に夜になっていた。
退屈から解放されたブレンと殆ど夢の中で時を過ごした姉と飛行機から降りる。
ブレンは敷き詰められた空間が嫌いだった。
狭い場所は動きを制限され、自由を奪われると思っているからである。
暴れてわがまま言い出すのをやっと抑えたのだ。
二人は空港から出る。
温度の差が天と地のほどでも、ブレンは飴を満足した顔で咥えていた。そう、これこそが彼が食べたかったものなのだ。
「これからどこに行くつもりだ?」
ブレンは先程苛立ちしたとは思えないほどの落ち着いた声で言った。ローレは少し考えてから、
「先に旅館だ。いきなりあの屋敷に押し掛ける訳にはいかない」
二人はタクシーに乗りホテルへ向かった。
10年も経った今では、街並みも当然変わっている。馴染みのない建物ばかりで、まるで行ったことのない場所に来ている気分だった。
2時間ほどして二人はタクシーから降りた。
姉が料金を払っている間にブレンは荷物を地面置き、そしてホテルの姿を興味津々に目を通していた。
ホテルはいかにも洋風な設計で、豪華にできている。英文字で長々とホテルの名前が刻まれていた。入り口の上には広場らしき場所があって、ホテルの商店に立ちづく人や、写真を撮る人、荷物を運ぶ人などで賑やかになっていた。そして向かい側には大きな噴水がある。スポットライトは黄金色でホテルの壮大さを演出していた。
「ブレン!」
姉の呼び声でブレンは我に帰った。いつの間に目の前の夢のような景色に意識を捉われていたのだ。
「ああ、すまない」
彼はぼんやりと返事をした。
ロビーも何から何まで豪華で上品だった。
ブレンはそんなかしこまった雰囲気には慣れていない。上流社会に入ったばかりの人間如く振舞っていた。好奇心とは裏腹に、この場の全てが全て不自然に感じていた。
それとは逆に、ローレは何も特に違和感を覚えなかった。人の目を全く気にせずに、冷め切った冷静な態度でホテルへチェックインしていた。
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