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ふかふかの布団の上で、三人とウェカは眠っていた。
ーー午前6時前ーー
ウェカの家にこそこそと侵入してきた者がいた。
普段ならば竜達は気配に気づくはずだが、今日は初めてのふかふかの布団に興奮してなかなか寝付けなかったようで、まだぐっすり眠っている。
浸入してきた者は、ケイトの姿を見て笑みをこぼす。
「ふふ…」
そのまま枕元に歩み寄る。
誰も気づかない。
侵入者は、枕元に腰を下ろし、笑みを浮かべながらケイトの耳元に顔を近づける。
短く息を吸うと、
「くろさま!!」
「うわぁ⁉︎」
耳の傍で大声を出され、驚いてとび起きるケイト。
「ミミ?何して…」
それを見て、侵入者――ミミは、くすくすと楽しげに笑った。
「ふわぁ…どうしたんですか、ケイト?」
ケイトの声で目を覚ました残りの二人は、目をこすりながらミミに目を向けた。
「えへへ、くろさまのねがおが見たくて、きちゃった!くろさま、しろさまが言ってたとおり、ねがおもこわくないね!」
ミミの言葉を聞いて、ケイトが若干顔を赤くしながらリヒトを見る。
「リヒトぉ…」
「ミミさんと仲良くなれたようですし、良かったじゃないですか!」
が、そこは天然。
ケイトが送る視線の意味になど気づかず、にこにこと笑みを浮かべた。
「な、ミミ…!竜神様になんという失礼を!」
ウェカは、青ざめてミミを見た。
客人、いや、それ以上の存在である竜たちに朝から無礼をはたらいては、竜たちが気を悪くするのではと考えたのである。
「ほら、はやく謝りなさい!」
「あ、いや、びっくりはしたけど起こしに来てくれて嬉しかったし、ミミを怒らないでくれ」
「なんと…黒様の寛大な御心に感謝いたします」
ウェカはそう言って深々と頭を下げた。
ミミはそれを見て一瞬きょとんとした表情を浮かべたがすぐ笑顔になり、
「くろさま、しろさま、かみさまさん、ひろばでごはんだよ!」
そう言ってケイトの腕をくいくいと引っ張った。
「あったかいうちに食べよ!」
「今行く、ちょっと待って」
慌てて布団をたたみ始めたケイトだが、ウェカに制止される。
「私がやります!竜神様方のお手を煩わせるようなことは致しません!」
朝から気合十分のウェガは、そう言って三人の布団をたたんでくれた。
お礼を言い、五人で家を出た広場に向かう。
広場につくと、
「お三方!昨夜はよく眠れましたかな?」
長老が気付いてこちらへやって来た。
広場にはおそらく村人全員が集まっている。
今朝のごはんは、昨日神様がとってきていた草の入った煮物らしい。
こうして、村に朝が訪れた。
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