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「早く!」
ケイトにそう言われ、慌てて僕は後ろを向いて飛びました。
でも、あの大きな「ジズ」っていう魔物は強いと神様が言っていました。
ケイトも、いくら古代竜だと言っても、危ないはずです。
僕は何度も後ろを振り返りたい衝動にかられながらも、我慢して飛びました。
「グ、グググッ!」
後ろでジズの鳴き声が聞こえました。
早く、早くこの場を離れなきゃ!
僕はわき目もふらず翼を動かしました。
「リヒトくん、この辺りで下におりよう」
しばらく飛び、神様にそう言われたので人化し、僕達は森におりました。
「神様さん」
「うん?」
「あのジズっていう魔物、どのくらい強いんですか?」
心配で、きいてしまいました。
「ああ、ジズはね、悪魔の箱庭のあたりにいるはず。それこそ、あのコブラウルフと同じくらいの危険度かな。」
安心して、ほう、っと息をつきました。
あのくらいなら、ケイトも勝てるはずです。
「ただ、あの魔物、さっきは大分油断してたし、まだレベルが低いからよかったけど、本当のジズの怖いところはその圧倒的な速度だよ。」
速度?
確かに、空での速度では僕じゃとても勝てる速度じゃありませんでした。
僕だって一応古代竜です。
その速度を超えるというのだから、十分すごい速度だと思うのですが、あれでもまだ精一杯じゃないのでしょうか?
「もう少しレベルが高くて、油断してなかったら、たぶん今のリヒトくんたちじゃ姿をとらえられないよ」
「そんなに!?」
そんなに速い魔物だったとは…。
あのジズのレベルが低くて良かったです。
もしもっとレベルが高かったら、きっと僕は逃げられなかったでしょう。
しかし、全力じゃなかったのなら、ケイトは大丈夫でしょうか?
「速度が高い分、防御がかなり低いけどね。今のケイトくんの攻撃力なら、一発当たりさえずれば勝てるよ」
良かった、速い上防御も高かったらどうしようかと思いました。
ケイト、頑張ってください…!
そう思って木々の間から空を見上げた時です。
「ググッ!」
ジズの声が聞こえました。
ヒュウウウウウッ!
何の音でしょう?
何かがすごい速度で飛んでいる?
この状況では、ジズとしか考えられません。
何かあったんでしょうか?
「ググググ、ググッ!」
またジズの声です。
ドズゥッ!
何かに当たった!
まさか、ケイト?
あの速度でぶつかられたのでしょうか?
ああもう、音だけじゃ不安になるだけです!
早く帰ってきてください、ケイト!
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