竜神様

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主君の慈悲深さを少しでも身につけたい僕たちは、人達の話を聞くことにしました。 「我らの村に、昨日、その巨鳥がやって来て、村の食料を、蓄えていたものから育てていた家畜や作物まで全て掻っ攫い、その上、村人を襲ったため、我らの村は、深刻な食料不足に急に陥った上、改善する為の人手まで失いました」 三人が頭を下げました。 「竜よ!どうか、我らの村をお救いくだされ!」 なるほど、ジズの被害にあったんですか。 主君ならどうするでしょう? 決まっていますね。 「ケイト、神様さん、いいですか?」 「うん、僕は賛成だよ!」 「俺も」 僕は頭を下げたままの男達に言いました。 「できる限り、お手伝いさせてください!」 そう言うと、男たちは顔を上げ、涙を流して喜びました。 「さ、早速、村へ帰ろう!」 「竜神様だ!竜神様が我らの村に!」 「ついてきてくだされ!」 僕たちは、三人についていきました。 しばらく歩くと草原を出て、木の柱と藁でできた建物がたくさんあるところに出ました。 「ここが、我らの村です!」 三人のうちの1人がそう言うと、建物からわらわらと人が出てきました。 あの建物は家だったんですね。 まだ人は慣れないので、ケイトと僕は緊張でかたまってしまいました。 「おいおい、誰だよこいつら。」 「村が危機だってのに、余所者なんか連れて来やがって」 「ったく、帰れよ!」 どうやら、僕たちは歓迎されていないようです。 それはそうですね、村がギリギリのピンチなのに、人を連れて来るなんて。 何か言いたいのですが、喉がからからに乾いて声が出ません。 「いいかみんな、落ち着け!」 「何を騒いでおる」 人が左右にわかれ、1人の老人が姿を現しました。 力はそれほど強くないはずなのに、なんだか威厳というか、どっしりと落ち着いた雰囲気の人間です。 「長老!」 おお、長老ということは、この村のリーダーでしょうか。 僕たちの知る長老みたいな分からず屋じゃないといいのですが。 「貴様らは誰じゃ?」 「長老、この方達は、」 「黙っておれ、ウェカ。お主には聞いておらぬ」 「僕たちは、人間が『竜神の息吹届く草原』って呼んでる場所から来たよ。人間に興味があって来たら、その三人に会って、村の状況を聞いたから、お手伝いに来たんだ!」 神様がそう説明すると、人達はわはは、と笑いました。 な、何かおかしかったんでしょうか? 「竜だとよ!あははは!」 「全く、本当に竜を知らないから吹ける法螺だな」 「この村に法螺吹きなんざいらねえよ、帰れ帰れ」 嘘じゃないけど、信じてもらえないようです。 ど、どうしよう…。 「竜というのは、本当なのか?」 長老はそう言いました。 良かった、疑ってはいるけど、完全に否定はしないようです。 まだチャンスがある! 「おい長老、本当なわけねえだろ。」 「早く追い返そうぜ」 「黙っとれと言うておる。儂はこの方々に聞いておる」 長老がまわりの人の言葉にそう返すと、長老もボケたな、とまわりの人は言って、僕たちが本当に竜だとは少しも考えていないようです。 「本当。嘘は言ってない」 「どうやって証明できる?」 人化をとくのは、古代竜だとバレる危険がありますから、やめておいた方がいいですね。 ええと、ええと…! 「ったく。早く帰れよ」 「本当の竜に会ってこいよ、森の向こうで」 「ははは!そうだな、村から出て行く上もうお得意の法螺も吹けなくなるぜ」 「帰れ!」 「帰れ!」 「帰れ!」 「帰りやがれ!」 と、ケイトの気配が動きました。 「ガルァァアァォォオオォッ!!」 まわりの建物の柱にピシッとヒビが入り、藁が吹き飛ばされ、ざぁっと砂煙がたちました。 人間達は腰を抜かして長老以外の大半がへたり込んだり尻餅をついたりしました。 「うるさい!疑うならそれでいい、俺たちは助けようとしてるだけ。でも、俺たちがいて迷惑になるなら意味ないから、帰れって言うなら、帰る。どうする?」 ケイトが腕を組んで言いました。 「ほ、本物かよ…」 「りゅ、竜だ、竜だ!」 「わ、我らはなんという無礼を…っ」 や、やった! 信じてもらえたようです。 少し方法は乱暴でしたが、ケイトに後でお礼を行っておかないと。 と、長老が膝をつきました。 「竜よ。どうか、我らの村をお救いくだされ」
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