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やっと信用してくれた村人たちにひれ伏される。
どうかお守りくだされ、と言われてしまった。
つい中々信用せず帰れと繰り返す村人たちに、洞窟にいた頃からの相手を黙らせるクセで思わず声を上げてしまったが、信じてもらえてよかった。
俺たちは、長老に今の村の状況を聞いた。
まず、食料不足。
家畜は全滅。
作物の備蓄は、1日一食にしても村人たち全員に食料を与えられるのは明日まで。
次に、人手不足。
今、農作業や狩りなどを行えるのは、俺たちが会ったあの三人のみ。
深刻だった。
俺たちは今後の行動について話し合う。
「俺は狩りに行く」
「僕は薬草でもとって怪我人の回復を手伝おうかな!」
「僕は…うーん、村の見守りでも」
「よし、決定だね!」
「俺は、今から狩りに行く。」
「僕はついて行って薬草とか取ってくるね!」
「僕は村にいて、魔物などを追い払います!」
おおお、と村人たちが期待に満ちた視線で俺たちを見る。
神様が村人の一人から、竹という植物を編んで作ったという採集用のカゴを渡され、背中に背負っていた。
「竜神さま、お願い致します!」
頭を下げる長老に小さく頷き、俺たちは森に向かった。
「神様、あれ食える?」
「あ、野生の豚だね。いけるいける」
草をもっしゃもっしゃと食っている豚に背後から近づき、ジズと戦った後に獲得した魔法を試してみた。
『スキル「闇魔法・爆影」を発動しました 』
豚の影が爆発した。
ドォンッ
豚は気付くことすらなく、
グシャッ
肉片に成り果てた。
「…おえ」
神様が顔を青くする。
「ごめん、ちょっとやり過ぎた」
でも、大して力を込めていなかったんだけどな。
動物は魔物よりずっと弱いから、もっと小さな力でいいのだろう。
力のコントロールが出来るようにならないと、主にうっかり怪我させてしまうかもしれないな。
それは嫌だ。
俺は豚だったものが、もう細かすぎて食べられないと判断し、次の獲物を探した。
少し歩くと、人型の俺の身長と同じくらいの高さの肩の、大きな茶色の動物だった。
動きの鈍そうな体、頭には角が生えていた。
「あ、あれ牛だね。あれも美味しいよー」
背中のカゴに、俺にはどれも同じにしか見えない薬草をつんでは入れていた神様が顔を上げて教えてくれた。
次は使い慣れない魔法ではなく、まだ力のコントロールがやりやすい素手でいこう。
げ。
口からだらりと涎をたらしている。
牛は、さっきの豚とは違い、自らに危険が迫っていることを本能的に感じたらしく、しかし危険の対象が見当たらないので混乱しているようだ。
俺は高めにジャンプし、まだ俺を認識できていない牛の頭めがけて足から落下する。
「よっ、と」
両足をそろえて頭を蹴る。
ぐしゃり
牛の頭が勢いよく地面に叩きつけられた。
飛び散った肉片を避けて着地。
今度は、体の部分は綺麗に残った。
牛一匹だけじゃ足りないが、これを持って移動すると動きが制限されそうだ。
一旦村に戻るか。
「神様、これ持って行って来る」
「僕も重くなってきたからついていくよー」
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