竜神様

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焚き火を囲んでの夕食は、とても楽しいものでした。 ケイトも子供の1人と話していました。仲良くなれたようで良かったです。 後片付けは、みんなでやることになりました。 僕とケイトは火を片付けたりはできないので、明日以降のために薪割りを手伝おうと、村の薪を置いている倉庫に向かいました。 あ、ここですね。 「あ、黒の竜神様、よろしければ井戸の水汲みを手伝ってはいただけませんか?」 「ああ」 ケイトが長老に呼ばれていきました。 「あ、白の竜神様は薪割りをお願い致します」 「はい!」 男性に呼ばれ、僕は斧を渡され、薪割りをはじめました。 薪に斧を当て振り下ろすと、薪と下の台を真っ二つにした上、地面に刃が食い込んでしまいました。 うっ…。 も、もっと力を加減しないと。 「白の竜神様」 一緒に薪割りをしていた男性が話しかけてくれました。 「はい、なんでしょう?」 「あなた方は、すごいですね。感謝しかありません。女性にも大人気だし…」 「女性?」 パカリ、パカリと薪を割りつつ、話をします。 「あそこです」 「?」 男性が顎で示した場所に目をやると、数人の女性が顔を赤くして楽しそうに話していました。 「ねぇ見た?白の竜神様の笑ったところ!」 「見た見た!ちょっと失礼だけど、可愛すぎる!」 「子供にも優しいしね」 「でも、黒の竜神様の笑顔も可愛かったわぁ」 「あ、あれね!ちょっと照れくさそうにしてるのとか、たまんない!」 「普段はちょっと怖いけど、中身は全然よねぇ」 「私は黒様はカッコいいと思うけど」 「どっちもアリだわ」 「一緒にいる、神様さん?名前は不思議だけど、あの人もイケメンだよねえ」 「うんうん!紳士的というか?」 「はぁぁ、この村に来てくれるなんて」 「私、この貧乏な村に生まれてよかったって思ったわ」 「わかる!」 「…そうでしょう?」 「可愛いだとか細かいことはよく分かりませんが、褒めていただいてるんですよね?とっても嬉しいです」 僕がそう言って笑うと、男性は少し斧を振り下ろす手を止めて、 「素直ですね、竜神様は」 と笑いました。 「リヒト、水汲み終わった。手伝うことある?」 水汲みを終えたらしく、ケイトが顔を出しました。 「あ、じゃあ薪割りを」 「ん、分かった」 薪割りは、三人でやったため数十分ほどで終わりました。 「ありがとうございます。これで一カ月はもつでしょう」 「お役に立てたようで、何よりです」 最初、ケイトも力を入れすぎて地面に斧を食い込ませていましたが、途中から慣れたようです。 薪割りを終えた僕たちが広場に行くと、村人たちが集まっていました。 何かあったんでしょうか? と、長老が気づいて説明してくれました。 「これは、白様、黒様。今、誰の家で寝ていただくかを話し合っている最中なのですよ」 どうやら、僕たちを泊めてくれる家を決めているようです。 「許可をいただければ、地面で寝ますよ?」 「いけませぬ!竜神様ともあろうお方に地面で寝ていただくなど!急いで決定いたしますので、狭いですが我らの家にておやすみください」 長老は急いで村人たちを向いて話し合いを再開しました。 結局、僕たちは交代で村人たちの家に泊めてもらえることになりました。 今日は、最初に会った三人のうちの1人、ウェカという男の人の家に泊めてもらいます。 「黒様、白様、神様さん。嫁もいないので狭く華のない家ですが、どうぞゆっくりしてくだされ」 「ありがとうございます」 ウェカさんはとても丁寧にもてなしてくれました。 布団は一枚と客人用に一枚しかないようでしたが、近くの家から客人用の布団を借りてきてくれました。 ちなみに、僕たちは「布団」というものを知らなかったのですが、神様に教えてもらいました。 薄い布の中に鳥の羽根を詰めたもので、とてもふかふかで気持ちがいいそうです。 「布」というのは、人化したときに身にまとうこの「服」みたいな、薄くてひらひらしたものだそうです。 生まれて初めての、布団! 布団の上に足を出すと、今迄僕たちが寝ていた岩や地面とは全く違う、ふわふわして柔らかい感触。 「おお…!」 思わずダイブしてしまいそうになるほど気持ちいいものです。 ケイトも布団をぽすぽすと叩きながら目を輝かせていました。 「ほ、本当にこの上で寝ていいんですか⁉︎」 「もちろんです!」 やったぁ! その日の夜は、布団に興奮するあまり、なかなか眠れませんでした。
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