第1話 サタン

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第1話 サタン

 雑草が刈られ、綺麗に整備された庭。その一角に植えられた樹の下に腰をおろして、アリスはただ『なんでもない』時間をボーッと過ごしていた。  何か楽しい遊びはないかしら?  そんなことを思いつつ、ふと庭の端へ目線を移動させると、見知らぬ『人』の後ろ姿が視界に入る。 「……誰?」  立ち上がり、警戒しながらゆっくりとその人物へ歩み寄った。  長く黒い(つや)やかな髪を一本に束ね、頭部に白いウサギの耳を二本生やした女性らしき人。『それ』はアリスが自分を見ていることに気づくと、花が咲くようにふわりと微笑んでこう言った。 「ついておいで、アリス」
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