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動物園からの帰り道、家族5人を乗せた自家用車に、突然、居眠り運転のトラックが激突したのだ。
真白は全治1ヶ月の重症を負ったものの奇跡的に命をとりとめたが、父も3人の姉達もこの世を去ってしまった。
突然のことに、現実を受け止めることが出来ない。
きっと、これは悪い夢に決まって
る。
目が覚めたら、お父さんもお姉ちゃん達も、必ずいるはずだ。
ああ、こんな悪い夢、早く醒めて欲しい。
お姉ちゃん、お願い、いつものように頬ずりして僕を起こして……。
しかし、願いも空しく悪夢が醒めることはなかった。
父にも姉達にも、もう二度と会うことは出来ないことを認めざるをえなかったのだ。
更に、絶望した真白の心をえぐるように、母方の祖母は頬を平手打ちして心ない言葉を投げつけた。
『あんたがいたから、こんなことになったんだ。この子達の母親だって無理してあんたなんかを生まなきゃ死ぬことなかったのに……。何であんただけ生きてるんだい!返しとくれ!娘と孫達を返せっ!』
祖母がもともと姉達と自分の態度が違うことは感じていた。
それを淋しいと思うこともあったが、父や姉達の愛情に包まれていたせいで、さほど気にはしていなかったのだ。
しかし、こんな激しい憎悪の目を向けられたのは初めてだった。
祖母にとっては、ひとり娘である母を奪った自分が憎かったのだろう。
僕のせい
僕が生まれなければ、お母さんは死ぬことなかった。
僕がいなければ、お父さんも、優香お姉ちゃんも、愛里お姉ちゃんも、陽菜お姉ちゃんも死なずにすんだ。
ごめんなさい
僕は……僕は生まれるべきじゃなかったね。
その日から、真白は自分が生まれたことが間違いだったのだと思い込むようになり、笑うということを忘れてしまったのだ。
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