芽生えた気持ち

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 樹の看病により、真白の熱が下がり翌日の晩には起き上がれるまでになった。  お礼の言葉を告げて帰ろうとする真白に、樹が頭を下げて頼み込む。 「頼む!俺んち、今、親も兄貴も妹も長期出張中でさ、誰も家にいないんだよ。独りじゃ寂しくてよ、もう一晩泊まってってくれよ。 それにまだ大事をとったほうがいいだろ」  丁度、土日で連休であったため学校は問題ないが、明日はアルバイトに出向かなければならない。   「でも明日はアルバイトがあるし、それに着替えだってないし」 「バイトだったらここから行けばいいだろ。着替えなら俺のを貸すから、なっ、頼むから泊まってってくれよ」 「でも、悪いから……」 「いいんだよ。俺がいて欲しいんだから頼むよ」  樹に押しきられ、真白はもう一晩だけ泊まることになった。   「すまないが、着替えこれでもいいか?」 「えっ!……これって……」  樹に差し出されたのは、女性用のトレーナーとジーンズ生地のキュロットだ。 「俺と兄貴のものだとタッパが合わないだろ。妹が置いていった服が丁度あったから、こっちの方が体に合うと思ってさ」 「でも、いくらなんでも……」 「その格好よりは動きやすいと思うぜ。まあ、外に出るわけじゃないし、とにかく着てみてくれよ」  今、身に付けているのは裾を引き摺っている状態のバスローブだ。  確かに、不自然な格好で動きにくい。  しかし……。  高校生男子が、2歳しか違わないらしい年下の女の子の服が入るはずがない。  渋々着替えてみると、幸か不幸かサイズがぴったりだったのだ。  年下女子の洋服が着れるほどの、貧相な体に情けなさを感じる。  160センチをやや越えた低い身長と、発育のいい女子より華奢な体型に悲しくなるほどだ。 「おおっ!ぴったりじゃないか。妹より似合ってるぞ」  「誉められても嬉しくないんだけど……」   とにかく、今は私服を持っていないため諦めるしかなかった。  姉達からお古を着せられ、女装させられたことを思い出す。 「まあ、仕方ないよね。妹さんに悪いけど今夜は借りておくね」 「妹は発育がいいし、女にしてはでかい方だからな。今はそれも着れるか分からないし気にするな」  その成長具合を自分にも分けて欲しいものだと、真白は思った。    
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