338人が本棚に入れています
本棚に追加
/178ページ
飼い犬である白い豆柴のミルクが、樹を脇道に引っ張った。
「おい、どうしたんだよ?ミルク」
ミルクがぐいぐいと樹を誘導する。
連れてこられた先には、無人の廃工場があった。
「何だ? ここに何かあるのか?」
ミルクが『わん』と吠えると、中に入れというかのように促す。
普段は大人しく滅多に吠えたてることはないのだが、身近で事件が起きたときなど、このような振る舞いをする。
落とし物の財布を見つけたり、迷子の子供、体調が悪くなって踞る老人など様々なトラブルを発見したことがあるのだ。
どうやら、ミルクには危険を感じとる能力があるらしい。
「まさか、死体が転がってないだろうな?」
恐る恐る建物の中に入ると、がらんとした何もない殺風景な所である。
「おい、ここに何があるんだ」
ミルクが唸り声をあげるので、とりあえず歩いてみる。
「……うああぁぁー!………」
悲鳴らしき高い声が聞こえたような気がした。
最初のコメントを投稿しよう!