傷だらけの人形

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 彼らの取り囲んでいたものが解放され、視界に飛び込んだものに息を飲んだ。  両手首を頭上で拘束され、衣類を靴下以外に何も纏っておらず、全身痣だらけで落書きをされた裸体が吊るされていたのだ。  しかも肛門には何かが差し込まれ、鮮血が太ももをつたっている。  更に、下半身には白濁色の液体が付着している。  その鼻をつんざく臭いは男性特有の精液であることが分かった。  まさか、こんな性的な暴力まで ……。  テレビや漫画の中でしか知らなかった拷問が、現実に行われていたのだ。  あまりの痛々しさに目を背けたくなるが放置するわけにはいかない。 「おいっ!大丈夫か!?……いったいこれは?……」  直ちに駆け寄って、肛門に刺さったものを抜くと極太のマジックである。  おそらく、これで身体に落書きをされたのかも知れない。  次に手首の縄をほどこうとするが、頑丈に縛られているため簡単には出来ない。  「チキショー!……なんて固いんだ。……おっ!丁度いいもの見つけた」  逃げた連中が落としたらしいナイフが地面に転がっている。   拾ったナイフで削るように縄を切り、手首を解放してやると、裸体を抱きかかえた。  首を腕に寄りかからせ、垂らしていた鼻血をハンドタオルで拭き取った顔は抜けるような白い肌をのぞかせる。   「えっ……!こいつは……」  気を失って瞳を閉じている顔には見覚えがある。  高校に入学した一年生の頃、同じクラスだった綾瀬真白だ。  現在は隣のクラス、確か森下らグループと同クラスのはずである。  高校生男子にしては小柄で、少女と見間違うほど愛らしい顔立ち、悲しげな瞳をした友達を作らない孤独な少年だった印象でしかない 。 「それにしてもこんなことまで酷すぎる。これは犯罪だぞ」  地面に鞄から飛び出した私物や、剥ぎ取られたらしい衣類が散乱している。  樹はそれらをかき集め、下半身を拭うと下着を履かせてやる。  上着を羽織ってやると、真白の身体を抱き上げた。  
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