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樹は真白を自宅に連れ帰ると、居間のソファーに寝かせ毛布をかけた。
幸い家族は、誰もいない。
高校入学と同時に、父親の海外勤務が決まり、母親と二歳年下の妹の3人は、現在海外で暮らしている。
年の離れた兄と樹だけが自宅に残ることになったのだ。
その兄も数日前から仕事で3ヶ月出向することになり、その間は独り暮らしの状態だ。
樹はポケットから拾った紙切れを取り出した。
暴行現場の地面に落ちていたものだ。
真っ二つに破られたものを繋ぎあわせると、もう少し幼い頃らしい真白と中年の男性、年上の女性が3人、合わせて5人で写った写真であった。
その中の真白は幸せそうに笑顔を浮かべ、天使のように愛らしい。
「こいつ笑うとこんなに可愛いんだな」
ソファーに寝ている真白の顔をのぞいて写真の中の少年と見比べる。
樹の知る真白は人形のように死んだような瞳をして、ポツンと独りでいるような男子だったと記憶している。
裸体に刻まれた、みみず腫や煙草の火を押し付けられたらしい火傷の痕、マジックで書かれた落書き、付着していた精液は、あまりにも苛酷に痛め付けられていたのを物語っていた。
こんなことは今始まったことなのだろうか?
人形のように死んだような瞳をするのは、このようなことも関係するのかも知れない。
「とにかく、これをなんとかしてみるか」
無残に破られた写真は真白にとって、大切なものだったに違いない。
樹は写真のかけらを掴むと、自室に向かった。
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