338人が本棚に入れています
本棚に追加
/178ページ
さっきまで冷たかった身体が、毛布を掛けられたように温かくなったような気がする。
ここはどこだろう?
もしかしたら天国かな?
だとしたら嬉しいな。
お父さん、お母さん、お姉ちゃん達に会えるかも知れない
真白は霧のベールに覆われた中にいた。
しばらく歩いた後に光が指した。
その中に懐かしい顔ぶれが浮かびあがる。
なんと、それは亡くした家族だったのだ。
写真だけしか顔を知らなかった母
穏やかでお人好しの父
家事が得意で母親代わりをつとめてくれた長姉の優香
ファッションセンスの良い美人の
次姉の愛里
いじめっこから庇ってくれた、男勝りで活発な三姉の陽菜
両親と年の離れた三人の姉達は、真白に笑顔を向ける。
ああ、やはり僕は天国に来ることが出来たんだ。
胸がいっぱいになり家族に駆け寄る。
「お父さん、お母さん、優香お姉ちゃん、愛里お姉ちゃん、陽菜お姉ちゃん、会いたかったよ」
しかし、彼らは寂しげな顔でゆっくりと首を振ると遠ざかっていく。
「嫌だ! 行かないで もう僕を一人にしないで!」
この世界は苦しみしかない。
家族を死なせた罰だと堪えてきたけど、もう心が限界を迎えている。
もう痛くて苦しい思いをするのは嫌だ。
助けて……。
真白は目の前から姿を消そうとする家族に、救いを求め続けた。
最初のコメントを投稿しよう!