1 はじまりは突然に

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チャットの画面がたちあがると、 『明日香、おつかれさま 作業中?』 『おつかれー絶賛作業中だよ』 『ごめんね、おそくなってしまって』 『うん、紗季子なんかあった?こんなにおくれるなんて、今までなかったから心配してた』 『うん、チャットだと手が止まっちゃうだろうから、通話にしていい?今、自宅?』 『ううん、駅前のコワーキングスペースにいるけど今人いないから通話できそう。ちょっとヘッドセットにするから待ってて』 とヘッドセットをつけ、Bluetoothをつなぎ、マイクの位置を調整する。 『お待たせー通話できるよ』 とおくると、すかさずスマホのメッセージアプリの通話の通知がきてクリックする。 「明日香……ほんとにごめんね、日程きついよね、大丈夫?」 と紗季子の心配げな声が聞こえてくる。 「ううん、まあ、先に連絡もらってたし、どうにかなると思う、結構シンプルな作りに落ち着いたんだね」 「そうそう、PC用はそうだけどスマホとタブレットの方がけっこう複雑というか」 「まあ日曜日までには仮アップできるかな。テストサーバに」 「サーバアップしたらテストこっちでもするから教えて?」 「了解!でさ……何があったの?」 「うううんと……修羅場だったの。」 「修羅場??」 「彼の家に行ったら、浮気相手の女がいて……別れる別れないとかいろいろあって、仕事も手につかないくらいぐだぐだになって」 「うん、それで?」 「最後に宮本さんに助けられた」 「とりあえず、ご飯は食べてるよね?寝てるよね?」 「うん、それは大丈夫。宮本さんに厳しく管理されてたから、まるで実家の母のように口うるさく言われてたし」 「とりあえずはよかった。また仕事目処ついたらご飯行こ」 「ああああー仕事中ごめんね。また、連絡するね。ありがとう。それじゃあ」 と、通話を切ってほぉーと一息つく。 (はあ、また宮本さんかあ。) 宮本さん 宮本裕貴 ―― 私の大切だった人。
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